天然草のハットは乾燥に弱く、フェドラハット等の場合ピンチ(つまみ)をつまんで、
着脱を繰り返すうちにトップの先端がクラックしてしまいます。
これは“肌”と同じで、潤いがあればシワ、ひび割れも起こりませんが、完全に乾燥してしまうと、
ひび割れてしまいます。
パナマ(トキヤ草)も同様、一旦ひび割れするとその部分にクセが付き、やがて穴が空きます。
それは例え10万円のパナマHATでもそうなります。
帽体(パナマ)を蒸気で蒸らす→「仕上げ」から逆算した深さまでトップの丸い木型に盛り込み、
クラウンとブリムの根元をマクラメ(細いロープ)で縛る→「乾燥」→蒸気を当てながら
手でトップをティアドロップの形に成形&ブリムにアイロンがけ成形→「乾燥」→蒸気を当てながら別の木型で
“もどり”を付ける→「乾燥」→薄めのアプレ(硬化剤)を刷毛で入れる→「乾燥」&成形・・・
ザックリ言えばこのステップでシェイプが決まり、そこからスベリ(スウェットバンド)や
リボン&レザー等の飾りを付け、最後に蒸気&アイロンを使いながら成形して完成。
注意:上記の工程に「乾燥」が4回登場しますが、これでもストロー内まで完全に乾燥はしていないのです。
特にパナマハットの場合この時点ではまだ皮のようなしなやかさがあります。
クラックする原因の一つは、既製品特有の“金型”を使用するところにあると思われます。
ハットの量産には短時間で完成させる金型を使いますが、金型は素材の水分を完全に抜き切ってしまいます。
ここにパナマ(天然草)と金型のジレンマがあるように思います。
なので既製品のパナマハットよりもA.C.C.C by marseのパナマハットの方が多少長持ちします。
とは言え、メンテナンスをしなければ時間経過とともに、皮のようなしなやかさが消え完全乾燥し、
やがてクラックしてしまいます。
これは天然草の宿命でもあります。
オレンジの皮を擂って、キッチンペーパーか薄手の生地(ハンカチ)で濾過します。
そこから絞り出したオレンジピールの液体に水を加えスプレーボトルに入れてよくシェイクし、
画像の「一般的にクラックする部分、、、」に吹きかけます。
次にボディ(リボンや飾り以外)全体にも吹きかけます。
裏地がない場合は裏からも吹きかけ陰干しします。
定期的にこれを繰り返していれば、クラックする確立はグンと下がります。
*但し白いストロー(ホワイトパナマ)は変色する可能性がありますので、自己責任で願います。
またフェドラハットのトップクラウンに、フロントピンチ(つまみ)と言う、くぼんだ部分(画像参照)が
ありますが、着脱の際にこの部分を持たないことをお勧めします。
「つまみ」と言うのにつまんじゃいけない・・・矛盾していますが、
帽子を長持ちさせる為の「労り(いたわり)」として捉えて頂ければ幸いです。